会長挨拶

令和5年度 会長挨拶

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「3年のコロナ期間を経て、全自病協業務にみられた変更点等について


公益社団法人 全国自治体病院協議会

会長 小熊  豊

 

 1.はじめに

 新型コロナウイルス感染症(コ ロナ)が5月8日から感染症法上5類となり、様々な規制が撤廃さ れました。コロナは感染力が強いことから我々医療者にとって対応が難しく、皆様引き続き警戒されていることと思います。先日の九州ブロック会議では、沖縄県立中部病院ではコロナの再流行で大変な状況になっていると報告され、 コロナ発症の地中国では、6月末に大流行が再び起きると中国の専門家が予想したとも聞いています。我国では第9波が起きるのか、いつから?流行の広がりは?…… など、油断してはならないと考えるところです。
 また、次元の異なる少子化対策の財源を巡っては、3兆円台半ばを確保するために社会保険料の一人月500円程度(年6,000円程度)の上乗せ、企業負担分の同額up、社会保障分野の1.2兆円程度の歳出削減、既存の予算活用を考えていることが報道され、医療・介護関係者からは社会保障費の削減、流用に強い反対の声が上がっています。2024年度トリプル改定を控え、賃金up(処遇改善)、物価・エネルギー費の高騰が重くのしかかり、コロナ診療報酬特例、病床確保料の半減(10月からは廃止?)で、令和5年度以降医療経済は大幅に悪化すると予想されています。公定価格である医療・介護報酬は、医療の進歩、高齢者の増加に反して益々抑制が強められ、厳しい運営を強いられています。そのような状況のなか、いかに少子化対策とはいえ医療・介護費が削減されるなど、全く論外と言わざ るを得ません。無駄の削減は大事と思いますが、必要な物、不可欠な物を無視して財源を圧縮・削減するのは暴挙ではないでしょうか。先日の日本病院団体協議会(日病協)代表者会議でも議論されましたが、強い反対の意思表示が必要と考えます。
 昨年までの本稿では、医療制度、医療体制などの現状や課題、 政府関係省庁や各種委員会、他病院団体との協議内容等をお伝えし、全国自治体病院協議会(全自病協)としての考え、対応などを皆様にご報告申しあげて参りまし た。しかし、先日の自治体病院議 員連盟(議連)総会でスライド、 資料等を用いて重要な問題をご説明し、議連の諸先生、総務省、厚労省、文科省の3省の方々に、課題、要望としてお伝えしました。 また、全国自治体病院開設者協議会(開協)定時総会においても、 開設者の皆様に同様にお話し申し上げました。その際用いたスライ ド、資料等が、本誌本月号にそっ くり掲載されると聞いており(本誌今月号、議連ニュース、要望書、 開協総会コーナーを是非ご覧ください!!)、今回はコロナを経て変わった、あるいは変わりつつある全自病協本部の体制、業務内容等についてご報告したいと思います。皆様にとりましては、知っているようで知らない?本部・事務局の動きと言っても良いでしょうから、中身を気楽にお読みいただき、是非今まで以上に有効にご活用いただければと考えています。 ご質問等もあれば、ご遠慮なくお 尋ねいただきたいと思います。

2.全自病協組織体制

 全自病協の組織図(図1)をご覧ください。邉見名誉会長は全国公私病院連盟の会長にご就任さ れ、全自病協はその会員病院として毎月理事会での協議に参加しています。他にも日病協・代表者会議→私と田中先生、実務者会議→ 小阪、野村先生が出席、日本病院会(日病、仙賀副会長はじめ多くの常任理事、理事、代議員を公立代表として推薦)に加盟し、我国の医療を巡る様々な課題を協議、 対応策を検討しています。
 全自病協では会長の私と、竹中、 望月、松本、田中副会長、末永、 中島参与の幹部のもとに毎月幹部会を開催し(昨年12月にご退任さ れた原前副会長は、現在参与就任 依頼中、中川元参与は規定により退任)、協議会の大方針が協議されます。その後、幹部と7支部推薦の常務理事10名、常務理事会推薦の同6名、精神科特別部会推薦の同1名によって、現地集合とWeb併用の形で常務理事会が開催されます。コロナ前は全員が集合し、コロナ中はWebでの開催でしたが、様々な課題の検討、対応策協議が4~5時間かけて熱心に行われます。この常務理事会には規約を変更し、理事、監事の先生方のWeb参加、自由な意見発表が可能になるようにしたところで、毎月ご参加いただく先生も少なからずおられます。理事会、総会は併せても年に数回しか開催さ れないため、本常務理事会に多く の理事、監事の先生方のご参加をお待ちしているところです。総務部より毎回ミーティングアカウン トなどお送りしていますので、是非ご参加お願い致します。
 また、常務理事会当日には、協議会雑誌の編集会議が毎月開催され、協議会雑誌の特集テーマ、内容等が決定され、雑誌発刊に向けた具体的な活動に繋げています。現在設置している9部会からも、それぞれの部会の様々な課題、テーマ、アンケート結果、学会の優秀演題、研修会案内や報告、要望等を掲載いただき、皆様の熱い思いを述べていただいているとこ ろです。最近では診療情報管理士、 社会福祉士、精神福祉士の皆さんから部会の設立が要望され、業務の重要性、将来性を考えると開設が望ましいと理解しているところですが、対象人数、配置状況等の関係で設置可能か、検討しているところです。
 常務理事会終了後には、幹部が記者会見を行い、多くの担当記者に会議内容を説明、全自病協の考え、方針、要望等を伝えるとともに、我々が行ったアンケート調査結果等の報告や、会員病院の実情、現場の考え方を報告・説明してい ます。コロナによって自治体病院の重要性、公平・公正な医療対応が正しく評価され、我々の主張が正当に受け止められ、支持されて きているように思っております。
 図1にお示ししましたように、全自病協には重要な委員会が多数設置されています。このうち医師の働き方改革推進検討委員会は、働き方改革に向けて最近設置したものですが、望月副会長をリーダーに積極的にご検討いただき、有用な方向性、指針などを会員病院の皆様にご提案頂いていると考えます。当協議会としては、無理矢理A水準に押し込める必要はなく、 働かない改革にならないよう、当面はB、連携B、C1、C2を有効に活用して、少しずつ時間外勤務を減少すること、また宿日直制度も様々な対応策が考慮されることから、鋭意ご検討いただければと考えています。医療機関勤務環境評価センターからの報告では、 6/6現在166件の申請で、1月から月30件程度に増加、評価手続きに約4か月必要とのことで、来年4月実施には10月中までの申し 込みが望ましいと聞いています。 ガイドライン等も勤務環境評価セ ンターHPに公開しているとのこ とで、ご活用いただければと考えます。  
 診療報酬対策委員会では、田中副会長、小阪委員長を中心に、 2024年度改定に向けて多くの要望項目をまとめていただき、6月22 日に厚労省保険局長などに全自病協として直接要望いたしました。 日病協からも全病院団体の要望と して、入院基本料、食事療養費のupなど項目を絞って要望して いますが、なかなか簡単には叶え られない状況が続いています。コロナ問題、少子化対策を控えどう決着するか、中医協の動きともども結果を注視したいと思っています。
 臨床指標評価検討委員会、中小病院委員会等も積極的にご活動いただき、全自病協として取り組まなければならない重要な課題をしっかりとご対応いただいています。 公立病院であることから、メンバーの経年的交代などが生じますが、活動の低下に繋がらないよう対応したいと考えておりますし、 あらたな事業策等にも対応できるよう支援体制の維持、強化に努めたいと考えているところです。

3.事務局体制

 梶谷事務局長の下に経営調査部・医師求人求職支援センター、企画部、研修部、総務部の4部が組織されています。梶谷局長、森山部長、熊谷副部長の3氏は総務省より、中嶋部長は厚労省から出向し、實吉部長は公募により某市立病院事務長から転職して現在に至っています。熊谷副部長はR5、5から新たに赴任されました。残念ながら現状では正職員を募集してもなかなか採用に至らない状況が続いており、派遣職員の方々に頑張っていただいています。

〇経営調査部:自治体病院の経営調査、対策支援を担当し、総務省の経営強化GL対応、DPCに対する分析、中小病院問題、医療の質の評価・推進事業、働き方改革、医薬品等の購入問題、全自病協データベースの作成や多団体との統計的調査、AI・ICT・情報システム業務、優良病院表彰、へき地医療貢献者表彰事業などを分掌しています。そのため自治体病院が抱える様々な課題に関してアン ケート調査等を頻回に行い、会員病院の皆様には面倒をお掛けしているところですが、様々な問題の実態把握、全自病としての施策・ 方針の立案に果す役割は大きいものがありますので、どうぞ宜しくお願い致します。 全国国民健康保険診療者協議会(国診協)と当協議会で以前から運営している地域包括医療・ケア認定医制度を担当し、昨年からは地域医療を守る病院協議会(通称6病協:国診協、全自病協、日本慢性期医療協会(日慢協)、地域包括ケア病棟協議会(地ケア協議会)、全国厚生農業協同組合連合会(厚生連)、日本公的病院精神科協会(公精協))が設立した地域総合診療専門医制度、日本地域医療学会も担当しています。日本地域医療学会は国診協の小野会長を理事長として、昨年東京で第1回が開催され、本年12月15―17 日に第2回学会が当協議会志摩市民病院 江角先生のもとで、賢島宝生苑で開催されます。地域医療に関心を持つ若手医師、学生さんたちに多数参加(学生さんは無料)してもらい、学生さんの企画シンポジウムなども開催する予定になっております。関心のある先生方のご参加を求めておりますので、宜しくお願い致します。

〇医師求人求職支援センター:現状では経営調査部が兼務しており、HPをリニューアルして、 斡旋が成立するよう努めており、令和4年は8件成立しています。以前は独自の部署に専属の人員を配置して、年40件以上の斡旋に成功していたこともありましたが、後述する協議会の財政事情の悪化、コロナによる活動抑制で、現在は併任体制と なっています。本年の10月以降は斡旋業務を再度活性化するために、選任職員2名を配置して活動を強化する予定にしていま す。(そのため総務部関連の職員の補充募集を行っており、会員病院関係者、退職者等で希望される方は、詳細を当協議会事務局長、総務部長にお尋ね頂き、ご応募いただきたいと思います。)また、全自病協独自のこうした動きとは別に、地域医療機能推進機構(JCHO)が中心となって、日本医師会、日病、 全日本病院協会(全日病)、当協議会が参画して、退職医師の再雇用を斡旋する「医師のセカ ンドキャリアで地域医療を支えるネットワーク」を立ち上げており、R4年度は常勤医師3名、 非常勤医師3名の契約を得たと ころです。

〇企画部:医療制度関連問題(地域医療構想、医師偏在対策、専門医制度、医療安全、第8次医療計画等)を担当し、議連関係、開協との協議・相談、地域医療 再生フォーラムの開催、国等への要望関連活動、厚労省などの各種委員会対応、日病協、他病院団体との協議、診療報酬対策などを担当し、臨床研修指導医 講習会も企画・運営しています。 また協議会雑誌の発行も担当しており、全自病協の医政・学術関連の大事な業務を担っています。コロナ禍で臨床研修指導医 講習会の開催に苦労し、集合形式からWeb形式に変更したり、 回数を調整したり、ディレク ター、タスクフォースの諸先生のご理解、ご協力をいただきながら、大変苦労を重ねたところです。Web形式に変更後、当協議会主催の指導医講習会への参加を希望される医師が増え、R5年度は集合形式2回、Web 形式6回と開催を増やす予定です。医療を取り巻く目まぐるしい変化、様々な課題に、迅速に、的確に今後も対応を重ねていく 予定です。

〇研修部:9つの部会の活動を担当し、各種研修会、講演会、関 連会議の開催を企画・実施しています。コロナによってこれらもWeb形式での開催となっておりましたが、経費も掛からず、自院内で関係者が集まって聴講できる利点もあり、今後集合形式に戻りつつありますが、Web形式も捨てきれないように思われます。本研修部には全国で活躍する中小病院の事務長さん達にお集まりいただき、中小病院事務プロジェクトチームを設立 し、中小病院の運営上の課題、対策、対応の要点などを、皆さんの経験を通してご紹介・ご提示いただいたりしています。また、当協議会参与の中島先生が設立した公精協と関連事業を行い、精神保健指定医研修会事業も実施しています。本事業は、先の9部会とは違い集合形式での開催が国から要求され、コロナの動きを見ながら苦労して実施しているところです。

〇総務部:定款、諸規定、契約、文書等の管理・保存、予算・決算、会計業務を担当。役員、職員の人事、給与、旅費等の支給、福利厚生、会員の入退会、広報 事業、病院賠償保険の事務処理、総会、常務理事会、理事会の開催、全自病協学会、ブロック会議、都道府県支部事業の実施、災害・BCP対応、栄典・記念事業、他団体、賛助会との調整、海外医療視察研修団、国際交流、事務局の保守管理など、実に様々な事項を担当して います。海外医療視察研修団、 国際交流については、コロナによって事業を中断しており、今のところ再開の目途は立ってお りません。協議会はH20年から H27年まで財政調整基金を取り崩して事業を運営しておりましたが、H28年度から収支改善計画をスタートし、総務部の監督下、下記に述べる経営状況の改善に努めて参りました。R5現在、お陰様で財政的にやや持ち直し、事務職員の待遇改善、派遣職員の増員など実施できるまでに至りましたが、申し上げま した如く正職員の採用がままならない状況となっています。このような緊縮財政の施行に当たりましては、会員病院、役員、会員の皆様、職員のご協力に厚く感謝申し上げるところです。

4.収支改善計画

 当協議会はH20年からH27年まで財政調整基金を約3億5,000万円取り崩し、事業を継続して参りましたが、愈々基金残高が3,300万円となり危機的状況に陥ったことから、H28年度に収支改善計画をスタートし、以来経営改善に努めて参りました。正規職員の退職不補充、派遣職員の削減、職員普通昇給の抑制、出張時日当の廃止、会長報酬の減額(125万/月→115万円/月)、10月理事会の廃止、協議会雑誌発行部数の減などによって支出を抑制する一方、H29年度からは講習会・研修会の受講料の一部値上げ、R元年度から は12年ぶりに会費の値上げを実施させていただきました。当協議会の収入はこの会費、講習会・研修会費等以外に、自治体病院共済会 (共済会)が損保ジャパンとの間で行う病院賠償責任保険の事務手数料があり、会員施設からの会費収入よりはこの手数料の方が多い 状況になっています。会員病院、 病床数の減、他損害保険会社の進出などから、益々手数料収入が減るのではないかと心配していましたが、今のところ損保ジャパン、 共済会の扱う病院賠償責任保険のきめ細かさ、的確な対応、様々のサービス(医療安全に関わる研修、Web研修会、eラーニングサービス、各種テキスト、DVDの提供、電話による医療通訳サービス等) に、会員病院等の皆様もご理解頂 き、ご契約を継続いただいていることから、何とか維持できている状況です。詳細は理事会で総務部から決算報告を申し上げ、承認をいただきましたが(理事会資料財務諸表、収支計算書などご覧ください)、令和4年度末には財政整基金は1億9,600万円ほどまで 回復してきました。この際参考までに申し上げますと、共済会からは協議会に毎年1,500万~3,000万円のご寄付を頂き(利益率によって変わる)、全自病学会では325万円、ブロック会議でも20万円×7のご寄付を頂いています。賛助会の皆様からは、毎年600万円程(会員数によって変動)のご寄付を頂き、全自病学会では100万円、ブロック会議でも10万円×7のご寄付を頂いています。開協からは学会に際して700万円、医師求人求職支援センターに100万円、優良病院両会長表彰に50万円のご寄付を頂いています。
 協議会の収支の改善は前述の会費、受講料の増額、支出削減策の効果もありますが、何といっても大きなのはコロナによって各種会議、研修会等がWeb会議で行われ、旅費等が圧倒的に削減された効果によるものと考えています。集合形式でお互いの顔を見ながら議論を進めることの素晴らしさは皆様実感されているところですが、事務経費上はWeb会議での開催も捨てがたいところとなっています。 本年度からは事務職員の昇給を戻 し、職員の増員を図っていこうと している所ですが、既に述べまし たように簡単には進んでいません。 今後職員の出張時の日当支給を再開し、役員の飛行機での出張旅費支給に際しては、格安航空券が流布していること、鉄路では実費支給としていることなどから、飛行機賃を実費支給の形に改めたいと思っています(突然の便の変更によってかかる費用などは弁済します)。こうした一連の動きに対し、役員はじめ皆様のご理解・ご支援 賜をりたいと考えております(会長給与の減額は継続です)。

5.役員のプロジェクト チーム分担表

 表1をご覧ください。担当副会長のもとに役員のプロジェクト チームの分担を決めさせていただ きました。以前から設置していたチーム体制が機能不足に陥ってい るという指摘を受け、会長の発案のもと幹部会議で協議して、重要なテーマに沿って可能な限り、少なくとも年に数回はご協議いただく予定で、新たにプロジェクトチームを作らせていただきました。いずれも4副会長、正・副委員長のもと、真剣にご検討いただくことを考えております。2月の常務理事会で役員の皆様にはご了解いただき、既に活発に協議をいただいているチームが少なからずございますが、この度の年度代わりで常務理事の先生が代わられた病院があり、新任の先生に置き換えてプロジェクチームを再編成しました。もし不都合がございましたらご一報賜ればと考えます。大変ご多忙のところ申し訳ありませんが、宜しくお願い致します。

6.終わりに

 今年度は会長挨拶として、随分変わった内容を記載させていただ きました。会員の皆様には興味ない内容を記載したのかもしれませんが、私としては、全自病協の仲間としてこの協議会を運営し、自治体病院の最適な役割を目指していく上で、皆様にご理解しておいていただいた方が良いのではないかと思うことや、今後お願いする可能性のあることなどを素直に述べさせていただきました。私自身が理解不足の所も多々ございますが、担当事務局職員がご質問を頂いた際には、きちんとお応えできると思いますので、どうか宜しく お願い申し上げます。