3.経営健全化
公立病院改革ガイドライン
前述のとおり、自治体病院の経営は平成14年度以降急激に悪化し、診療報酬▲3.16%と過去最大のマイナス改定となった平成18年度、病院事業の決算は、経常損失1,997億円、経常損失を生じた事業数の割合78.9%と一段と厳しい状況となった。加えて、「地方公共団体の財政の健全化に関する法律」の施行に伴い、自治体病院は当該地方公共団体の財政運営全体の観点からも一層の健全経営が求められることとなった。
このような状況から、平成19年5月に開催された経済財政諮問会議において、当時の菅総務大臣が公立病院改革に取り組む旨を表明。6月19日に閣議決定された「経済財政改革の基本方針2007」の中でも、社会保障制度改革の一環として公立病院改革に取り組むことが明記された。それを受け、総務省においてガイドラインの策定のための「公立病院改革懇談会」が7月に設置され、同懇談会が11月に出した公立病院改革ガイドライン案を踏まえて12月24日に総務省自治財政局長から「公立病院改革ガイドライン」が地方公共団体に通知された。「公立病院改革ガイドライン」では、①経営の効率化、②再編・ネットワーク化、③経営形態の見直し、の3つの視点に立って、平成20年度内に「公立病院改革プラン」を策定するよう地方公共団体は求められた。
公立病院改革懇談会においては、当協議会に対するヒアリングの機会が設けられた。そこで小山田会長(当時)は、公が果たすべき医療の姿について、医師の勤務環境・医療提供環境が適正に保たれた基盤確保が基本であり、担うべき医療が明確で住民・医師双方にとって安心・納得が確保されるガイドラインが必要である。経営形態や数値・指標が先行しては、医師確保にはマイナスであるため、その点を十分留意し、まず公が担うべき医療の質に関する指標を基本に据え、その上で経営上の指標を重ね合わせる、という態度が必要である。また、経営が成り立ちうる繰入基準の再策定と認知が必要である旨の意見を述べた。
また、ガイドライン策定の段階では、当協議会の意見が取り入れられるよう総務省に要望書を提出。その要旨は、地域医療の確保がガイドラインの基本であることを明示すること。一般会計からの繰入について、財政上の都合でルールを度外視した削減や経営努力の成果が不当に侵食されないようにすること。経営形態の見直しが行われた場合であっても、自治体が公の責任として担うべき医療に係る経費の考え方については首尾一貫したものであること。改革プランの策定にあたっては、開設者は病院管理者と協議を行い、住民に対して責任を果たせるプランとすること等である。
さらに、総務省自治財政局長から公立病院改革ガイドラインが通知される直前の平成19年12月20日、当協議会および全国自治体病院開設者協議会の会長、副会長が総務省において、公営企業担当審議官、地域企業経営企画室室長から最終案についての説明を受け、それに対して両協議会から意見を述べ、 翌年1月8日、総務省を交えて、両協議会会長、副会長の所属する団体、病院の担当責任者会議を開 催。今後、各病院が改革プラン策定に取り組むにあたっての考え方等について協議を行った。
経営形態
平成17年3月からの地方独立行政法人法の施行や地方自治法の一部改正により平成18年9月から本 格導入された指定管理者制度により経営形態の見直しは進みつつあったが、「公立病院改革ガイドラ イン」の3つの視点の1つに「経営形態の見直し」が含まれたことによって経営形態の多様化が加速 度的に進んでいる。
ガイドラインにおいては、経営形態の見直しに係る選択肢として、地方公営企業法の全部適用、地 方独立行政法人化、指定管理者制度の導入、民間移譲等を示しているが、いずれの形態によるとして も、人事・予算等に係る実質的な権限が新たな経営責任者に付与され、自律的な意思決定が行われる 一方で、その結果に関する評価及び責任は経営責任者に帰することとするなど、経営に関する権限と 責任を明確に一体化する必要があるとしている。
平成25年4月現在の状況は、地方公営企業法全部適用が195事業350病院、地方独立行政法人化が34法人66病院、指定管理者制度導入が66事業68病院となっている。
財政措置
総務省では、「公立病院改革ガイドライン」に掲げた既存の地方財政措置の見直しを含め、財政措 置について検討する「公立病院に関する財政措置のあり方等検討会」を設置。平成20年7月から6回 にわたって開催され、11月に報告書がまとめられた。
その検討会では、当協議会から現副会長の中川正久常務理事(当時)が委員として参加。過疎地等においての地域医療確保のために必要な財政措置、公立病院の役割と一般会計繰入金の意義についての理解、医師確保に対する財政措置、自治体病院としての役割・機能・構造を考慮した病院建物の建築単価の設定、そして病床利用率については、過疎地域など地域特性や病院の規模、また年度間の変動要素も考慮が必要である旨、検討会の中で意見を述べた。そして、公立病院の経営については、個々の経営努力は必要であるが、医師不足という構造的な問題もあり、過疎の地域では改革プランを作成する余裕すらないのが実情であり、現場の実情を十分踏まえた上で財政措置のあり方を検討するよう訴えた。
当協議会でも、地方財政措置等については、検討会で議論されている内容を踏まえて、過疎地、産科・小児科・救急医療に対する財政措置、また病床利用率の反映等の検討にあたっては、地域医療確保の視点から、病院が担う機能、地域性や物価動向等を十分踏まえて見直しを進めるとともに、公立病院改革プランの実施にあたって、適時適切な助言・指導を求める要望を行った。
この結果、公立病院改革に関する財政措置が行われるとともに、平成21年度以降、救急に対する財措置の一部が特別交付税から普通交付税に移行、不採算地区病院の要件見直しとともに、産科、小児科、救急等の単価アップなど、地方交付税措置の充実が図られた。また、平成20年度に限り、近年の医師不足の深刻化等により発生した不良債務を長期債務に振り替え、その計画的な解消を図ることができるよう、「公立病院特例債」の発行が認められた。