1.自治体病院の推移とその果たしている役割

自治体病院の多くは、山村、離島等のへき地、不採算地区にあって地域医療の確保に努めており、また、地域の中核的病院として総合的一般医療、高度・特殊医療等の提供を行っている。
これら自治体病院の多くは、戦後、地方自治体が国・日本医療団・厚生連等から移譲を受けて戦災により荒廃した医療施設の状況を打開し、さらに国民皆保険という国民的要請に応え、地域住民の生命と健康を守るため設立整備されてきた。
自治体病院の使命は、「都市部からへき地に至るさまざまな地域において、行政機関、医療機関、介護施設等と連携し、地域に必要な医療を公平・公正に提供し、住民の生命と健康を守り、地域の健全な発展に貢献すること」(「自治体病院の倫理綱領」より)である。

現在、自治体病院はこの使命を達成するため、都道府県におけるセンター的病院として、また、広域圏における中核病院として一般的医療水準の向上に努めるとともに、高度・特殊医療等を行っている他、救急医療、へき地医療、さらには医師・看護師等医療従事者の教育・研修にも積極的に取り組んでいる。

また、病院の運営面についても他の病院・診療所との連携、地域における公衆衛生活動への参画等時代の要請に即応した活動を展開している。

自治体病院が果たしているこれらの役割のうち、指定医療機関等における自治体病院の割合は、次のとおりである。

  1. へき地医療拠点病院
    へき地医療拠点病院は、平成13年度にスタートした第9次へき地医療保健医療計画により、これまでの「へき地中核病院」及び「へき地医療支援病院」という2本立ての体制を見直し、代替医師や看護師等の派遣、へき地医療従事者に対する研修、遠隔診療支援等を行い、地域住民の医療を確保することを目的として創設された制度である。 平成24年1月1日現在、281病院が指定されており、このうち自治体病院は180病院であり、全体の64%を占めている。
  2. 救命救急センター
    救命救急センターは、初期救急医療施設及び第2次救急医療施設の後方病院であり、原則としてこれらの医療施設等からの救急患者を受け入れるとともに、医学生、臨床研修医等に対する救急医療の臨床教育を行う施設である。 平成24年12月1日現在、256病院が指定されており、このうち自治体病院は93病院であり、全体の36%を占めている。
  3. 臨床研修病院
    医師法第16条の2第1項の規定に基づき厚生労働大臣が指定する臨床研修病院は、平成25年度プログラム実施予定の一覧では、基幹型臨床研修病院は1,035病院で、このうち自治体病院は301病院であり、全体の29%を占めている。また、協力型臨床研修病院は2,731病院で、このうち自治体病院は591病院であり、全体の22%を占めている。
  4. エイズ治療拠点病院
    エイズ治療拠点病院は、エイズ対策の推進が緊急の課題となっていた平成5年7月に各都道府県知事宛厚生省保健医療局長通知で、速やかな拠点病院の整備・選定が要請されたことを受けて整備されたもので、重症患者に対する総合的・専門的医療の提供、地域内における情報収集と提供、医療従事者の教育、エイズ患者の積極的な受け入れを行っている。 平成24年10月1日現在、381病院が指定されており、このうち自治体病院は144病院であり、全体の38%を占めている。
  5. 災害拠点病院
    災害拠点病院は、阪神・淡路大震災の教訓を生かし、平成8年より整備されたが、東日本大震災で明らかになった課題に対応するため、平成24年4月よりその指定要件が強化された。   それは、災害発生時に被災地からの傷病者の受入れ拠点になること、災害派遣医療チーム(DMAT)を保有し、派遣体制があり、他の医療機関のDMAT や医療チームの支援を受け入れる体制が整っていること、災害時に地域の医療機関への支援を行うことなどである。   平成24年4月1日現在、基幹災害医療センターには59病院が指定されており、このうち自治体病院は31病院であり、全体の53%を占めている。地域災害医療センターには598病院が指定されており、このうち自治体病院は249病院であり、全体の42%を占めている。
  6. がん診療連携拠点病院
    がん診療連携拠点病院は、専門的ながん医療の提供等を行う医療機関の整備を図るとともに、がん診療の連携協力体制の整備を図るほか、がん患者に対する相談支援及び情報提供を行うため整備が進められているもので、厚生労働大臣が適当と認め指定した病院である。 平成24年4月1日現在、都道府県がん診療連携拠点病院に51病院が指定されており、このうち自治体病院は20病院であり、全体の39%を占め、地域がん診療連携拠点病院には346病院が指定されており、このうち自治体病院は132病院であり、全体の38%を占めている。
  7. 小児救急医療拠点病院
    小児救急医療拠点病院は、小児救急医療体制の確保が困難な地域において、複数の2次医療圏を対象とする広域圏で入院等を必要とする小児救急患者を受け入れる小児の2次救急医療施設である。 平成23年度、28病院が指定されており、このうち自治体病院は13病院であり、全体の46%を占めている。
  8. 周産期母子医療センター
    周産期母子医療センターには、総合周産期母子医療センターと地域周産期母子医療センターがあり、 国の整備指針に基づき都道府県が指定・認定をしている。   総合周産期母子医療センターは、相当規模の母体・胎児集中治療室(MFICU)を含む産科病棟およびNICU を含む新生児病棟を備え、リスクの高い妊娠に対する医療、高度な新生児医療等の周産期医療を行うことができる医療施設を都道府県が指定するものである。 地域周産期母子医療センターは、産科および小児科(新生児医療を担当するもの)等を備え、周産期に係る比較的高度な医療を行うことができる医療施設を都道府県が認定するものである。 平成24年4月1日現在、総合周産期母子医療センターに92病院が指定されており、このうち自治体病院は34病院であり、全体の37%を占めている。また、地域周産期母子医療センターには284病院が認定されており、このうち自治体病院は111病院であり、全体の39%を占めている。
  9. 感染症指定医療機関
    感染症指定医療機関は感染症予防法で規定されている感染症の患者の医療を行う医療施設であり、特定感染症指定医療機関と第一種感染症指定医療機関、第二種感染症指定医療機関がある。 特定感染症指定医療機関とは新感染症の所見がある者並びに一類感染症、二類感染症、新型インフルエンザ等感染症の患者の入院を担当させる医療機関として、厚生労働大臣が指定した病院である。 第一種感染症医療機関とは一類感染症、二類感染症、新型インフルエンザ等感染症の患者の入院を担当させる医療機関として都道府県知事が指定した病院である。 第二種感染症医療機関とは二類感染症、新型インフルエンザ等感染症の患者の入院を担当させる医療機関として都道府県知事が指定した病院である。 平成24年4月1日現在、特定感染症指定医療機関に3病院が指定されており、このうち自治体病院は1病院である。第一種感染症指定医療機関には41病院が指定されており、このうち自治体病院は24病院であり、全体の59%を占めている。第二種感染症指定医療機関には530病院が指定されており、このうち自治体病院は262病院であり、全体の49%を占めている。
  10. 地域医療支援病院
    地域医療支援病院は、医療施設機能の体系化の一環として、患者に身近な地域で医療が提供されることが望ましいという観点から、第3次医療法改正(平成10年)で制度化された。 紹介患者に対する医療提供、医療機器等の共同利用の実施等を通じて、第一線の地域医療を担うかかりつけ医等を支援する能力を備え、地域医療の確保を図る病院として相応しい構造設備等を有するものについて都道府県知事が承認している。 平成24年8月1日現在、419病院が指定されており、このうち自治体病院は125病院であり、全体の30%を占めている。
  11. 不採算地区病院
    山村、離島等のへき地において医療の確保に取り組んでいる自治体立病院は、その多くが不採算の経営となっている。これらの病院のうち一定の条件に該当する病院については不採算地区病院として特別交付税が国の財政措置として交付されるが、特別交付税の対象となる不採算地区病院とは、「その有する病床が150床未満であり、直近の一般病院までの移動距離が15キロメートル以上となる位置に所在していること〔第1種不採算地区病院〕、病床数が150床未満であり、直近の国勢調査における「人口集中地区」以外の区域に所在していること〔第2種不採算地区病院〕」の条件が満たされている病院をいう。 なお、平成23年度地方公営企業年鑑から、特別交付税の対象病院である自治体立不採算地区病院は、全国の自治体病院919病院のうち、全体の13%に当たる121病院が第1種不採算地区病院であり、全体の21%に当たる188病院が第2種不採算地区病院となっている。
  12. (公財)日本医療機能評価機構認定病院
    (公財)日本医療機能評価機構は、病院が医療のサービスを提供していく上で、その質の一層の向上を図るため、学術的な観点から中立な立場で評価し、問題点の改善を支援する第三者機関である。評価機構は、平成9年より病院機能評価を開始し、平成25年3月現在で2,409病院が認定病院となっている。そのうち自治体病院は365病院と全体の15.2%を占めている。
  13. (社)日本専門医制評価・認定機構加盟学会の専門医、認定医教育病院
    多くの自治体病院が(社)日本専門医制評価・認定機構加盟学会の専門医または認定医の教育病院となっている。