決議

 

全国の自治体病院は、地域医療の最後の砦として、都市部からへき地に至るさまざまな地域において、行政機関、医療機関、介護施設等と連携し、地域に必要な医療を公平・公正に提供し、住民の生命と健康を守り、地域の健全な発展に貢献することを使命としております。地域住民の命と健康を守ることが地域の担い手を地域に定着させるための基本であり、そのためには、とりわけ、地域において救急、小児・周産期等の医療を確保することは論を待たないところです。現在、進められている地方創生の要は地域医療と教育であり、自治体や自治体病院の役割は益々高まってきているといえます。

 

「医師の確保、医師偏在解消」は地域の医療提供体制確保の要です。自治体病院では、へき地・離島はもとより、地域における拠点病院等にあっても医師が不足しており、とりわけ、救急医療や総合診療、小児科、産科、外科、整形外科、麻酔科、精神科などは深刻ですが、そのような中、地域医療を必死に確保しています。医師の地域偏在、診療科偏在、無床診療所の都市部への偏在を解消し、「医師確保・医師偏在対策」の実効性を確保するためには国の関与が不可欠です。また、新専門医制度が地域医療の確保に支障を来たさぬだけではなく、むしろその推進に寄与するような、制度構築・運用が必要です。 更には、女性医師の活躍を支援する環境整備が必要です。

 

「地域医療構想」については、2025年へ向けた医療提供体制について構想区域毎に議論が行われています。 しかしながら、この改革が、医療費抑制を強調する余り、患者、地域中心の医療から離れたり、医療現場の気概を失わせるものであってはなりません。 国においては、その実現に向けた具体的方策について、地域医療構想は病院の統廃合、病床削減を目的としたものではなく、地域の医療ニーズに対応するためにどのような医療提供体制を構築するかという、その本旨に即して協議が行われるよう積極的な支援を行うことが期待されています。

 

医師の働き方改革に関する検討会報告書(平成31年3月28日)において、医師の労働時間短縮・健康確保と必要な医療の確保の両立という観点から、今後目指す医療提供の姿と医療現場の新たな働き方が示されました。 しかしながら、地域医療の現場においては、医師の地域偏在、医師、看護師等の不足によりタスク・シフト、タスク・シェアの実施も容易ではなく、大学病院や基幹病院等から派遣された医師により救急医療等が施行されるなどの厳しい実態があります。 ついては、今後とも、医療現場に混乱や支障を来たすことなく、医師をはじめとする医療関係者が適切に地域医療を担い、地域住民が安心して医療を受けられるよう、国においては、然るべく医師等医療人材確保への支援、診療報酬の見直しを含めた財政支援が行われるべきものと考えます。

 

消費税制度において、事業者である医療機関が支払う消費税については診療報酬により補塡される仕組となっていますが、診療報酬による補塡を超えて医療機関が負担している仕入れ税額相当額が生じ、特に、公立病院の補塡率は他の開設主体の医療機関と比べ最も低く、経営を一層圧迫しています。本年10月の消費税率引き上げにおいては各医療機関への公平な補填が求められます。

 

平成30年度診療報酬改定では、本体は0.55%プラスとなりましたが、薬価・材料がマイナス1.74%で、ネットではマイナス1.19%でした。前回のネット1.31%マイナスに引き続いてのマイナス改定となっており、政府が給与の引き上げを主導する中で大変厳しい改定でありました。

 

東日本大震災から8年が経過し、復興のステージは復興・創生期間に入り、関係者のご尽力により復興に向けた取り組みが続いておりますが、いまだ、必要な医療が十分に確保されている状態ではありません。 また、近年、地震、台風、集中豪雨、豪雪等の災害が頻発しております。 被災地において一日も早い復興が望まれるとともに、自然災害が頻発する我が国の医療提供体制の確保が強く望まれるところであります。

 

これらの課題は、開設者である首長と病院、都道府県の取組だけで改善することは困難であり、国レベルでの実効性ある施策が不可欠であります。 国民が、居住する地域にかかわらず国民皆保険制度の趣旨に沿って等しく適切な医療が受けられる体制を整えるためには、人的、物的、財政的な面での公的な支援が必要であり、2025年以降の超高齢社会に向けて、国、地方自治体、医療関係者が力を合わせ、このことを踏まえた適切な医療提供体制が確保できるよう、12項目の要望事項をここに決議いたします。

(令和元年度全国自治体病院開設者協議会 定時総会)