決議

全国の自治体病院は、地域医療の最後の砦として、都市部からへき地に至るさまざまな地域において、行政機関、医療機関、介護施設等と連携し、地域に必要な医療を公平・公正に提供し、住民の生命と健康を守り、地域の健全な発展に貢献することを使命としております。地域住民の生命と健康を守ることが地域の担い手を地域に定着させるための基本であり、そのためには、とりわけ地域において救急、小児・周産期等の医療を確保することは論を待たないところです。現在進められている地方創生の要は、地域医療と教育、就業支援、街づくりの再生であり、「まち・ひと・しごと創生」のために自治体や自治体病院の役割は益々高まってきているといえます。

国内における新型コロナウイルス感染症感染者は日に日に増加を重ね、4月7日に緊急事態宣言が行われ7都府県が対象区域とされ、その後対象区域が拡大されました。
自治体病院は、感染症指定医療機関としての役割を感染症指定医療機関596病院中300病院(平成31年4月:一部重複)が担って各地域で診療対応を行っており、果たすべき役割、期待は一層大きなものとなっています。
このような中、新型コロナウイルス感染症への医療や、救急医療などの医療崩壊を招かないような対応が求められています。新型コロナウイルス感染症が感染拡大している現状において、全国の医療提供体制はひっ迫し、医師を含めた医療人材が不足し、疲弊している状態にあり、これまでの前提条件が当てはまらない状況にあるため、将来的な医師数や病床数等の医療提供体制に関する一連の議論を、いったん凍結し、感染終息後に仕切り直しするべきであります。

将来を見据えた地域の医療体制の確保のための「地域医療構想」の推進に関し、令和元年9月厚生労働省は、公立・公的医療機関等について再編統合等の再検討を求めるとして、具体的な病院名を公表し、地域が混乱する事態となりました。その後、厚生労働省は地方の意見を丁寧に聞き、関係予算を措置する等としましたが、地域医療構想調整会議における民間医療機関に係る議論の方針は不明確です。
地域医療構想の推進は公立公的、民間医療機関を問わず同一の視点で検証していく必要があります。各自治体立病院においても一層の経営改善と機能分化を進めていかなければなりませんが、地域により自治体病院の果たす役割は異なることから、地域ごとに、自治体病院の果たしている役割を踏まえて、公立公的、民間医療機関を問わず議論を進められる環境づくりが必要と言えます。

 「医師の確保、医師偏在解消」は地域の医療提供体制確保の要です。自治体病院では、へき地・離島はもとより、地域における拠点病院等にあっても医師が不足しており、とりわけ救急医療や総合診療、小児科、産科、外科、整形外科、麻酔科、精神科などは深刻ですが、そのような中、地域医療を必死に確保しています。医師の地域偏在、診療科偏在、無床診療所の都市部への偏在を解消し、「医師確保・医師偏在対策」の実効性を確保するためには国の関与が不可欠です。
都道府県は、国が示す医師偏在指標により区域や目標医師数を設定した上で、医師の偏在対策を目的とする医師確保計画を策定することとされていますが、医師偏在指標は、限られた一定の条件で全国を相対的に比較したものであり、地域に必要な医療提供体制を十分に捉え切れていません。また、目標医師数についても、地方が必要としている医師数とかい離しており、これらを用いた医師偏在対策の手法では、へき地医療の確保など各自治体が取り組む医師確保対策が抑制され、ともすれば後退するのではないかという、強い危機感を持っています。
地域に医師を確保するには、大学医学部入学地域枠の継続、臨床研修における医師少数地域等における研修を半年間以上必修化、専門医研修における地方研修の必修化、医療機関管理者の医師不足地域勤務経験の条件化等により、地域に医師が循環する仕組みが不可欠です。更には、女性医師の活躍を支援する環境整備が必要です。

医師の働き方改革に関する検討会報告書(平成31年3月28日)において、医師の労働時間短縮・健康確保と必要な医療の確保の両立という観点から、今後目指す医療提供の姿と医療現場の新たな働き方が示されました。なお、引き続き検討することとされていた事項については、各検討会で議論が行われているところですが、地域医療の現場においては、医師の地域偏在、医師、看護師等の不足によりタスク・シフト、タスク・シェアの実施も容易ではなく、大学病院や基幹病院等から派遣された医師により救急医療等が実施されるなどの厳しい実態があります。
ついては、今後とも医療現場に混乱や支障を来たすことなく、医師をはじめとする医療関係者が適切に地域医療を担い、地域住民が安心して医療を受けられるよう、国においては、然るべく医師等医療人材確保への支援、診療報酬の見直しを含めた財政支援が行われるべきものと考えます。

消費税制度において、事業者である医療機関が支払う消費税については診療報酬により補塡される仕組となっていますが、診療報酬による補塡を超えて医療機関が負担している仕入れ税額相当額が生じ、特に公立病院の補塡率は、他の開設主体の医療機関と比べ最も低く、経営を一層圧迫しています。そのような中で、10%に引き上げられた消費税にかかる負担については、各医療機関への公平な補塡が求められます。

令和2年度診療報酬改定では、本体は0.55%プラスとなりましたが、薬価・材料がマイナス1.01%で、ネットではマイナス0.46%でした。前回のネット1.19%マイナスに引き続いてのマイナス改定となり、医療機関の経営は益々逼迫しており、医療機関のコストを反映した診療報酬体系が必要です。

東日本大震災から9年2か月が経過し、復興のステージは復興・創生期間に入り、関係者の尽力により復興に向けた取り組みが続いておりますが、いまだ必要な医療が十分に確保されている状態ではありません。
また、近年、地震、台風、集中豪雨、豪雪等の災害が頻発しております。
被災地において一日も早い復興が望まれるとともに、自然災害が頻発する我が国の医療提供体制の確保が強く望まれるところであります。

これらの課題は、開設者である首長と病院、都道府県の取組だけで改善することは困難であり、国レベルでの実効性ある施策が不可欠であります。
国民が、居住する地域にかかわらず国民皆保険制度の趣旨に沿って等しく適切な医療が受けられる体制を整えるためには、人的、物的、財政的な面での公的な支援が必要であり、2025年以降の超高齢社会に向けて、国、地方自治体、医療関係者が力を合わせ、このことを踏まえた適切な医療提供体制が確保できるよう、13項目の要望事項をここに決議いたします。

令和2年5月22日